主婦のパート(扶養範囲内)で働くための条件とは?
2018年の税法の改正により、扶養に入れる年収の基準額が大幅に変更されました。103万円の壁やら130万円の壁やら、一体どれくらい稼いだらお得なのか、そんなお悩みにお応えします。
・子どもも大きくなり、少しでも生活の糧になろうと、主婦のパート(扶養範囲内)で働こうと考えている方
・結婚してフルタイムの仕事からパートタイムにしようと考えいてる方
そんな方々に観て頂きたいです。
※この記事は、『主婦が夫の扶養に入り、夫が給与収入のみ』ということを前提に書いております。さらに主婦の収入もパートなどの給与収入のみとします。
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妻が夫の扶養(社会保険)に入るときの条件と手続き方法
記事概要
扶養には2種類ある
なぜ、扶養の年収問題がこんなにもややこしくなるかと言いますと、一つには扶養には2種類あるということが上げられ、それらがごちゃまぜになって伝えられているというのがあります。
その2種類とは、
@ 税制上の扶養
A 社会保険上の扶養
です。これらは全く違う法律で制度が決められております。
@は言わずもがな『税法』
Aは『健康保険法』と『厚生年金保険法(等)』です。
それでは、一つずつ扶養の範囲内を観ていきましょう。
税制上の扶養
主婦が税制上の扶養に入った場合、配偶者控除と言う所得控除が受けられ、夫の所得税と住民税が安くなります。
さらに、配偶者控除と呼ばれるものには、以下の3種類あります。
@ 配偶者控除・・・年収103万以内
A 配偶者特別控除・・・年収103万超〜201万円以下
B 老人配偶者控除・・・年収201万円以下かつ、その年の12月31日現在で70歳以上
@とAはあまり区別しなくてもよいものです。@は定額の所得控除に対し、Aは妻の年収によって段階的に控除額が減少していく所得控除のことです。
Bは観たまんまですが、老人配偶者控除の方がより多く所得控除が受けられます。
税制上の扶養の範囲内
それでは今回のテーマの扶養の範囲内ですが、下の早見表をご覧いただくと、どれらいの所得控除が受けられるかが分かります。
この表からも観て取れるように、税制上の扶養の範囲は、段階的に控除額が減っていくが、主婦の年収が201万円以内ということが分かります。
なお給与年収とは、交通費や住宅手当等、健康保険料、厚生年金保険料、雇用保険料、賞与、全て含めた1年(1月1日〜12月31日)の収入のことです。
社会保険上の扶養
続いて、社会保険上の扶養です。
社会保険上の扶養には、以下の2種類あります。
@ 健康保険上の扶養
A 公的年金の第3号被保険者
これら二つの扶養の範囲は、税制とは全く異なります。
条件1 主婦自身が社会保険に入らないこと
まず夫の扶養に入る以前に、主婦自ら会社を通して社会保険に入らなければならないという、ボーダーラインがあります。
そのボーダーラインを超えないことが第一の扶養の範囲となります。
では、主婦自ら会社を通して社会保険にならなければいけない場合とは、
@ 週の労働時間・勤務日数が、勤め先の通常の労働者の3/4以上
且つ
A 以下の要件を満たすもの
・勤め先の従業員数が501人以上
・週の所定労働時間が20時間以上
・1年以上雇用される予定
・学生ではない
・給与の月額が88000円以上
ということで、まずこれらに全て当てはまらないようにしなければなりません。
月額が88000円ですので、年収にしたら1056000円ですね。これが世間でよく言われている年収106万円の壁です。
このことは、主婦の勤めるパート先の会社などで確認するのが一番早いです。
雇用者が社会保険に自身で入ってしまうと、会社も厚生年金や健康保険の費用が発生してしまうこともあり、気にしていることも多いです。
後ほども書きますが、税制上のそれとは異なり、社会保険上の算定では月額で観ます。
条件2 主婦の年間収入が130万円を超えないこと
社会保険上の扶養に入る要件とはズバリ
主婦の年間収入130万円未満です。
つまりは、前述のボーダーラインを超えなければ殆どの場合扶養に入れます。
これが世間でよく言われている、年収130万円の壁です。
しかし、この言い方はあまり的を得ておりません。なぜなら、税制上で年収130万円未満だとしても、社会保険上では、年間収入130万円未満とは限らないからです。
また、逆もしかりで、年間収入130万未満だとしても、年収の場合だと130万円以上になることがあります。
よく観てみると、『年間収入』であり、決して『年収』ではありません。
年間収入とは、被扶養者と認定された日以降の見込み収入額です。
その年の過去の収入ではありません。
イメージで言うと、このような感じです。
例えば、1〜3月の間に300万円稼いでいた主婦が退職し、4〜6月まで就職活動して、7月からのパート見込み額が年間130万円に満たないとしても、
扶養には入れますが、夫の配偶者(特別)控除は使えません。
また、逆に300万円あったとしても、見込み額が少なければ4月から扶養に入れられるということです。
年間収入の見込み額は前述の条件1を満たさない場合において、
給与所得などの収入が月額108333円以下
雇用保険等の受給者であれば、日額3611円以下でないといけません。
税制上の年収では、失業手当金の収入は含まれなかったことに対し、社会保険上の年間収入では、それらが含まれていることにも注意が必要です。
以下、代表的な年間収入に含まれるものを記述します。
・遺族年金
・障害年金
・失業手当金
・労災保険の補償給付等
これらの月額が108333円を超えないようにしなければなりません。
尚、出産手当金や育児休業給付金(育児手当)に関しては、主婦自らの健康保険と雇用保険から出ているものであり、
そもそも主婦自身で社会保険に加入している状態であり、もちろん夫の扶養には入れません。
しかしながら、産休・育休中は、社会保険料が免除されているので、扶養に入る・入らないの心配もありません。
その他の条件
上記の年間収入130万円以内に加えて、以下の条件も必要です。
・同居の場合、収入が扶養者(夫)の収入の半分未満であること
・別居の場合、収入が扶養者(夫)からの仕送り額未満であること
また、主婦が60歳以上または障害者の場合は、年間収入180万円以内と条件が緩和されます。
まとめ
以上をまとめると、次のようになります。
T 扶養の範囲には、税制上と社会保険上の2種類あり、それぞれ全く異なる。
U 税制上の扶養では、150万円超えから段階的に夫が受けられる所得控除が下がっていく。
V 社会保険の扶養の範囲では、月額88000円と月額108333円が目安。
最後に、扶養に入れば必ずしもお得、ということではありません。
例えば、主婦自身が健康保険や雇用保険に入っていて、かつ要件を満たすと、扶養の被保険者ではもらえない、出産手当金や、育児休業給付金がもらえます。
何年後に子どもを授かる予定あると決めていれば、それに合わせて主婦自身で社会保険に入っていた方がお得な場合もあります。
大事なのは、税金や社会保険料のことよりも、ライフプランに沿って扶養に入るべきかどうかを決めるということです。
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